殷(いん)

 前17世紀末ごろから前11世紀半ばにかけて黄河中流域を支配していた古代中国の王朝。日本では「殷」とよばれることが多いが、これは次の周王朝がつけたもので、自らは商と称していた

殷墟の発見

 19世紀の終わりごろ、古代の文字をきざんだ骨片が北京の市内にでまわった。古文字学者らが研究した結果、伝説の殷王朝の王の名前がよみとれることが判明し、殷が実在した可能性がきわめて高くなった。

 甲骨文字とよばれるようになるその文字がきざまれた亀甲や獣骨は、羅振玉らの調査によって、河南省の安陽で出土することが確認された。1928~37年に、中華民国中央研究院の歴史語言研究所が大規模な発掘をおこない、殷王朝の宮殿や王族の墓などを発見した。

 この殷墟とよばれる都市遺跡の発掘によって、伝説の殷王朝の実在は証明された。中国はもちろんのこと、世界の考古学史上においても記念碑的な発掘であった。現在、宮殿区は整備されて一般に公開されており、また、現地の考古学者が今も調査をつづけている。

殷の遺跡

 殷墟以外の殷の遺跡は、現在までのところ河南省や河北省などでみつかっているが、首都の機能をもったと考えられるのは、殷墟と鄭州の二里崗(にりこう)遺跡である。殷王朝の首都は6回うつったと「史記」はつたえているが、殷墟はその最後の首都と考えられている。

 黄河中流域以外にも、黄河下流域の山東半島や、南方の長江中流域の湖南省・湖北省・江西省などにも殷が進出したらしく、関連する遺跡が発見されている。(注)

 

工芸三宝 >陶磁器>中国の歴代作>殷時代陶器

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灰釉弦紋尊

 ■商時代中期
 ■灰陶灰釉・口径19.6cm

  (注:尊=古代の酒器)


黄釉陶尊

 ■商時代中期
 ■白陶質・高さ27cm
 ■河南省鄭州銘功路西側出土

 

灰陶鬲(れき)

 ■商時代晩期
 ■灰陶質・高さ16.9cm
 ■殷墟小屯出土
 (注:鬲とは古代中国で用いられた三足の器。煮炊きに用いた。)


縄紋陶罐

 ■商時代晩期
 ■灰陶質・高さ14.9cm
 ■河南省広武出土


灰陶罐

 ■商時代晩期
 ■灰陶質・高さ31.3cm
 ■河南省殷墟小屯出土
 ■中国中央研究院所蔵


灰陶甕(かめ)

 ■商時代晩期
 ■灰陶質・高さ20.1cm
 ■河南省殷墟小屯出土
 ■中国中央研究院所蔵


(注:とは古代で物入れ・貯蔵・

   煮炊きなどに使った容器)


灰陶罐

 ■商時代晩期
 ■灰陶質・高さ19.5cm
 ■河南省殷墟小屯出土
 ■中国中央研究院所蔵


灰陶罐

 ■商時代晩期
 ■灰陶質・高さ14.7cm
 ■河南省殷墟小屯出土
 ■中国中央研究院所蔵


灰陶罐

 ■商時代晩期
 ■灰陶質・高さ10.1cm
 ■河南省殷墟小屯出土
 ■中国中央研究院所蔵


双耳尊

 ■商時代晩期
 ■灰陶質・高さ23cm
 ■河南省広武出土
 ■台湾国立歴史博物館所蔵


灰陶人形飾り

 ■商時代晩期
 ■灰陶質・左の高さ5.5cm
      右の高さ6.1cm
 ■河南省殷墟小屯出土
 ■中国中央研究院所蔵

 



灰陶壎

 ■商時代晩期
 ■灰陶質・高さ10.6cm
 ■河南省殷墟小屯出土
 ■中国中央研究院所蔵

 注:「」(そん)とは古代陶土製の吹奏楽器であり、円形あるいは楕円の形で、6つの穴があります。(中国「国際標準漢字大字典による」)


黒陶珠彩鉦

 ■商時代晩期
 ■殷時代後期・高さ14.8cm
 ■日本大和文華館所蔵

 注:「」(かね)とは(鐘)打ち鳴らすために金属で作った器具である(「大辞泉による」)

 


白陶片

 ■商時代晩期
 ■白陶質
  高さ7.7cm・長さ9.9cm 
 ■河南省殷墟小屯出土
 ■中国中央研究院所蔵

 

 

 

白陶豆

 ■商時代晩期
 ■白陶質・高さ10.9cm
 ■河南省殷墟小屯出土
 ■中国中央研究院所蔵

 注:豆=中国古来の高坏状の皿・鉢


灰陶甕(かめ)

 ■商時代晩期
 ■灰陶質・高さ20.1cm
 ■河南省殷墟小屯出土
 ■中国中央研究院所蔵
 (注:甕とは古代で物入れ・貯蔵・煮炊きなどに使った容器)


灰陶罐

 ■商時代晩期
 ■灰陶質・高さ19.5cm
 ■河南省殷墟小屯出土
 ■中国中央研究院所蔵


灰陶罐

 ■商時代晩期
 ■灰陶質・高さ14.7cm
 ■河南省殷墟小屯出土
 ■中国中央研究院所蔵


灰陶罐

 ■商時代晩期
 ■灰陶質・高さ10.1cm
 ■河南省殷墟小屯出土
 ■中国中央研究院所蔵


双耳尊

 ■商時代晩期
 ■灰陶質・高さ23cm
 ■河南省広武出土
 ■台湾国立歴史博物館所蔵

 

 

 

 

注:写真は光復書局「中国陶磁手帳」によるものでございます。
サーバー容量制限のため、一部だけ掲載いたします。