遼寧省(りょうねいしょう・リャオニンショウ) 中国東北地区南部にある省。南は黄海とポー海(渤海)に面し、南東部はヤールー川(鴨緑江)をはさんで北朝鮮と対する。南西から北にかけてホーペイ省(河北省)、内モンゴル自治区、チーリン省(吉林省)に接する。省都はシェンヤン(瀋陽)。面積は15万1000km2。人口は4203万人(2002年)。

 

 ■経済

 農業は米、中国全体の75%を占めるサクサン(柞蚕)糸、中国一の輸出量をほこるリンゴ、薬用ニンジンなどの漢方薬、漁業はクルマエビなどの近海養殖が特色である。石炭、鉄鉱石、石油、非鉄金属など豊富な資源にめぐまれ、中国工業の屋台骨をになう有力企業が集中する重化学工業基地である。金属、機械、石油、化学、建材の5業種がもっとも発達し、企業数の30%を占める大・中型国有企業が中心になっている。国内で交通がもっとも発達している遼寧は、東北地区の物流、商業の中枢をになっている。

 

 ■歴史

 戦国時代は燕の国に属し、秦代は遼西、遼東郡にはいった。1636年に清は国都を北京にさだめた後、この地に陪都「盛京」をおいた。1929年遼寧(リャオホー(遼河)流域の永遠の安寧の意)と改称された。アヘン戦争後、日本や帝政ロシアなどの外国勢力の介入にさらされ、31年の満州事変以降、全省が日本の植民地と化した。48年人民解放軍によって解放され、54年合併で遼寧省が設置された。

 1984年ターリエン(大連)が沿海開放都市に、88年リャオトン半島(遼東半島)全体が沿海開放地帯に指定され、現在省内14都市はすべて対外開放された。遼寧省は交通の要衝、重化学工業、高い教育水準などを生かしながら、新たな発展段階にはいろうとしている。日本を中心に、1000社をこえる三資(合弁、合作、全額外資)企業がすでに進出している。神奈川県、富山県、イリノイ州などと友好関係をむすんでいる。

 

 ■観光と文化

 遼寧省は7200年前の新石器時代の遺跡や、清朝の「三都」「三陵」など豊富な史跡にめぐまれ、国・省・市指定の160余カ所の重点文物をもつ。63の高等教育機関、300以上の研究機関をもつ中国有数の科学技術基地として知られる。

被子植物の最古の化石発見

 中国東北部のリャオニン省(遼寧省)で、1億4200万年前の地層から花をさかせる植物(被子植物)の最古の化石が発見された、との報告がアメリカの科学誌「サイエンス」1998年11月27日号に掲載された。被子植物はごく身近にみられる植物だが、その進化の道のりはこれまであまり知られていなかったため、今回の発見で解明がすすむと期待されている。

 化石が発見された地層の年代は、これまで最古とされていた被子植物の化石の年代より約2500万年古い。化石は長さ8cmの2本の茎で、種子をふくんだ小さな心皮がついている。

 心皮があることから、この植物は被子植物と分類されるが、この化石には花びらはなく、研究者の表現によれば「花以前の花」である。この化石植物はアルケフルクトゥス・リャオニンゲンシスArchaefructus liaoningensisと命名された。化石を発見し、分析したのは、南京地質古生物学研究所の孫革教授やフロリダ大学のデビッド・ディルチャー教授ら、米中の共同研究チームである。

 この地域からは、重要な恐竜化石も発掘されており、なかでも現生鳥類が恐竜の子孫であることを示唆する化石がいくつか発見されている。この地域で被子植物の化石が発見されたのは、今回がはじめてで、資料がかぎられており、この植物が種子をつける前の若い時期にどんな姿だったかはわからないという。

 このようなささやかなかたちで出現した被子植物が、今ではリンゴ、トウモロコシ、穀類など、農作物の大半を占めているのである。この化石を研究することで、植物界の進化の道のりに対する理解が飛躍的にすすむだろうと期待されている。

エンカルタ 百科事典 イヤーブック 1999年1月号より
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(資料出所:マイクロソフトエンカルタ2007)

 

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