新疆(しんきょう・シンチアン)ウイグル自治区(中国語で新疆维吾尔自治区)

 中国の北西端にある自治区。南西から北東にかけてインド、パキスタン、キルギス、カザフスタン、モンゴルなど8カ国と国境を接し、その国境線は5700kmに達する。面積は中国の自治区・省の中でもっとも広く、全土の約6分の1を占める。また自治区面積の4分の1を占める砂漠は、中国の砂漠総面積の3分の2に相当する。アジア大陸の内陸部にあるため、年平均降水量はわずか145mmと乾燥し、「朝に綿入れ、昼に半袖、夜に火鉢をかこんでスイカを食べる」といわれるように、気温の変化がはげしい。

  クンルン(崑崙)山脈やティエンシャン(天山)山脈の氷河などを主要水源とする570本の河川のほとんどは、海へ流下しない内陸河川である。なかでも全長2137kmのタリム(塔里木)川は、中国最長の内陸河川として知られる。人口の約45%を占めるウイグル族を中心に、漢族、カザフ族、回族、モンゴル族、満族など多くの民族が居住し、全住民の3分の2は漢族以外の少数民族である。自治区の中央にそびえる天山山脈を境に、ジュンガル盆地のあるペイチアン(北疆)と、タクラマカン砂漠のあるナンチアン(南疆)とにわけられる。面積は164万6800km2。人口は1905万人(2002年)。首府はウルムチ(烏魯木斉)。

 

 ■経済

 古くから、南疆では地下水路(カレーズ)によるオアシスでの小規模な定住灌漑(かんがい)農業、北疆の広大な草原では遊牧民による牧畜業がおこなわれてきた。中華人民共和国の成立後、中国人民解放軍野戦部隊を前身とする新疆生産建設兵団(1954年設立)などによってダムの建設、用水路の開削、防風・防砂林の造成などがおこなわれ、広大な新しい耕地が開拓された。小麦、繊維の長い綿花、テンサイ、種なしブドウ、ハミウリ、細毛ヒツジ、イリ馬などがおもな農畜産物である。

 石油と天然ガスの埋蔵量が豊富で、それぞれ中国大陸全体の28%と33%を占める。これまでに38カ所の油田、天然ガス田が発見されている。鉄鋼、石油とガス開発、化学、機械、毛織物、皮革工業が発達する。ウルムチ、カラマイ(克拉瑪依)、シーホーツ(石河子)、イーニン(伊寧)、カシュガル(喀什◇爾:◇は口偏に葛)は主要な工業地域である。また伝統的な手工業も盛んで、諸民族の帽子や楽器、じゅうたん、装身具などがある。

 道路を中心とする交通網がつくられ、ウルムチなどを拠点に自治区内の97%の郷・鎮、チンハイ(青海)省、チベット自治区、カザフスタンなどとむすんでいる。1962年に開通したランチョウ(蘭州)~ウルムチ鉄道は国内各地とむすぶ交通の大動脈で、90年にアラタウ峠でカザフスタンの鉄道とつながった。面積が広大なため、航空への依存度が高く、ウルムチを中心に十数の地区・州・市とむすぶ航空網がつくられている。ウルムチ空港はペキン(北京)、シャンハイ(上海)、コワンチョウ(広州)などとともに中国5大空港のひとつで、西アジア、アフリカ、ヨーロッパへの国際線があり、西北地域の玄関口としての役割をはたしている。

 

 ■歴史と文化

 この地には前7世紀ごろから多くのオアシス国家が建設されていた。前138年ごろ、漢の武帝による張騫の派遣をきっかけに「西域」とよばれ、中国と中央アジア、ヨーロッパとの間に交易や文化交流が盛んにおこなわれるようになった。清代の1884年に「新しい土地」という意味の新疆省が設置され、1955年に今日の自治区が成立した。

 近年、カザフスタンなどの中央アジア諸国との国境貿易が盛んにおこなわれる一方、外国資本、技術を導入した本格的な油田・天然ガス開発がすすめられようとしている。とくにタリム盆地は、世界最大級の未開発の油田地帯とみられ、その開発は長江中流の三峡ダム建設、上海のプートン(浦東)地区総合開発とならんで中国3大プロジェクトのひとつに位置づけられている。かつてのシルクロードはオイルロードにかわろうとしている。1994年末までに省内の外国資本直接投資額は4830万ドルに達し、三資(合弁、合作、全額外資)企業は617社にのぼった。

 古くから民族問題をかかえるこの自治区に対し、中央政府は経済の底上げ、生活水準の改善、少数民族幹部の登用などの民族融和策をすすめてきた。しかし、トルコに本拠がある東トゥルケスタン独立運動勢力やカザフスタンに本部をおくウイグル組織は反中央的な動きをつづけている。近年、イスラム教徒を中心とする反政府暴動やバス爆破事件などがおこり、中央政府は警戒を強めている。

 

 ■観光と文化
 

 東西の交易や文化交流がおこなわれたシルクロードの通路にあたるため、高昌古城、交河古城、アスターナ古墳群など古代の遺跡が多い。ウルムチにある自治区博物館には文書や織物、石器などシルクロードの歴史にまつわる出土品が展示されている。ウルムチの北東約110km、ボグダ(博格達)峰をのぞむティエンチー(天池)は観光避暑地として有名である。かつてこの地方は仏教の中心地だったため、クチャ(庫車)などに仏教石窟(せっくつ)遺跡が多くのこされている。イスラム教を信仰する民族が多く、1万をこすイスラム寺院などの宗教施設が自治区に散在し、イスラム教協会や学院などが設置されている。少数民族の情緒豊かなバザールは多くの観光客をひきつけ、ヒツジの丸焼きなど羊肉を材料にしたイスラム料理は有名である。

 漢語、ウイグル語、その他の少数民族言語が公用語として共用され、少数民族言語の新聞・出版物の発行、テレビ・ラジオ番組の制作がおこなわれている。新疆大学(1960年設立)をはじめとする21の大学、129の国公立研究機関などがある。また、各地には少数民族の歌舞団がある。

(資料出所:マイクロソフトエンカルタ2007)

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